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トヨタ、三洋電機など、
改正高年齢者雇用安定法の遵守策を打ち出す

大迫政子(国際長寿米国センタープロジェクト諮問委員)

改正の趣旨

高齢化の急速な進展による労働力不足の課題に対処するためには、高齢者の就労機会の拡大が必須である。これが、2006年4月1日に施行された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」の趣旨の1つである。企業はこの改正法に対応して、各社の異なる財務状況や労働力状況を反映する様々な措置を導入し始めた。

改正法の下では、現在、定年制のある企業の事業主は、
1)定年を現在の一般的な60歳から2013年4月までに65歳へと段階的に引き上げる
2)定年制を廃止する
3)再雇用などによる高年齢者の継続雇用を確保する制度を導入する
のいずれかの措置を講じなければならないことになっている。

厚生労働省が先頃行った調査によれば、大部分の企業は、労使協定で再雇用や定年延長の基準を設ければ、生産性の低い高年齢社員の雇用を回避できる柔軟な3)で対応する構えである。

沿革

高齢化が急速に進展する日本では、全人口に占める労働力人口の割合が急減しつつある。2050年には、日本人の3人に1人が65歳以上になると予測されている。高年齢者に健康を維持し、より長く働くよう奨励することは、高齢社会の課題に対処する有効な策の1つである。

高年齢者雇用安定制度が効果的に機能するためには、日本企業の雇用の精神や慣習に合った制度でなければならない。一般論としていうと、日本企業は継続勤務を評価し、よほどのことがない限り従業員の解雇に踏み切らない。このような雇用慣習においては、従業員の給与は、若い単身者から子供のいる世帯の世帯主、そして扶養する子供のいない高齢者世帯の世帯主へと、移り変わるライフステージの経済的ニーズに比例して増加するのが一般的である。同じ企業に何十年か継続勤務した従業員は、相当額の退職金を受け取る。この慣習は、企業が安定した労働力を維持することに貢献してきた。しかし、同時に経営者は職場の活気と生産性を維持する措置も採択しなければならない。

ごく最近までほとんどの日本企業は、労働力高齢化の悪影響に対し、1)定年制と2)55歳頃からの給与の段階的削減で対処してきた。厚労省が2005年に実施した調査によれば、約9割の企業で定年制があり、大半が60歳定年である。内閣府が2005年1月に行った別の調査では、回答企業の85%が55歳から60歳の高年齢者の給与を下げて設定している。給与削減率の中間値は20~30%である。

2004年に政府がそれまで60歳であった厚生年金受給開始年齢を2013年までに65歳へと引き上げることを定め、定年退職と年金受給の間に空白期間を作った時点で、伝統的な60歳定年退職は問題となった。この空白を埋めることが、改正高年齢者雇用安定法の主眼の1つである。改正法は年金(定額部分)の支給開始引き上げスケジュールに合わせて、定年を2006年までに62歳、2009年までに63歳、2012年までに64歳、2013年までに65歳へと引き上げることを奨励している。

実施:多様な高年齢者雇用制度

改正法の施行に伴う措置の導入については、まだデータがばらばらで不足しているが、以下に紹介するわずかな事例からも企業が導入する制度の多様性が窺える。
川崎重工業は即座に管理職以外の従業員の定年を63歳に延長した。市場での競争力を維持したい同社にとって、技能のある人員を確保することが必須であるからだ。
三洋電機は全社員を対象に再雇用制度を導入したが、再雇用希望者はごく一部にとどまっている。
これらとはまた別に、トヨタ自動車は再雇用希望者を技能に応じて選択的に再雇用することを選んだ。

■川崎重工業
モーターバイク、船舶、航空機などの大手メーカーである川崎重工業は、有能な労働力の確保を懸念している。労働力の人口構成を基に、11,000 人の現社員のうち5,000 ~6,000 人が向こう10年間で60歳定年退職を迎えると同社では予想している。報酬と退職制度の合理化が大きな懸念となっている。
労使の熾烈な交渉の後、ターゲット(Total and Active Reform for Grasping an Excellent Tomorrow =TAR-GET;卓越した明日を手にするための総合的かつ活発な改革)というプランが発表され、2003年に開始された。このプランは部課長クラスを除き、それまで60歳だった定年を63歳まで延ばし、部課長クラスには再雇用制度を提供するものだ。 60歳になった社員の基本給は50歳時点の50~60%程度に減額される。

■三洋電機
大手電機メーカーの三洋電機は、希望者を対象に定年から最高5年間再雇用する制度を設けた。再雇用制度は、管理職以外の社員を対象とするもので、60歳から65歳の社員がフルタイムからパートタイム(たとえば、週4日あるいは一日6時間など)への転換を含め、適切な仕事のスケジュールを選択できるようになっている。55歳を迎えた社員は、60歳になった時点で定年を延長したいか否かを会社に意思表示する必要がある。再雇用を希望する社員は56歳から60歳の期間、雇用機会延長の引き換えとして、給与を55歳時点の約 70~75% へと減額される。
だが、2000年から2006年までの退職者数が毎年400人強であるのに対し、再雇用申請者は約3%にとどまっている。希望者がこれほど少ない理由は、退職一時金の最高7割を年賦とできることを含め、同社の退職者が十分な企業年金を確保しているためかもしれない。

■トヨタ自動車
トヨタのプランは退職者再雇用制度の拡大が主眼だ。トヨタは高年齢者再雇用制度に参加する退職者の年齢上限を現在の63歳から65歳に段階的に引き上げる計画である。60歳を迎える全社員が参加できる再雇用制度の対象者は、以前は工場労働者に限られていたが、全社員へと拡大された。
再雇用申請者は55歳以降の実績を基に、1)健康状態、2)技能レベルと生産性、3)チームワーク能力などの勤務態度について評価を受ける。 2006年度には同年に定年を迎える1,260人の社員のうち、約700人の再雇用を予想している。

結び

2004年高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律は、高年齢者の雇用機会を拡充するプランを各社の実情に合わせて設計できる柔軟性を企業に与えている。プランの多様性は、各社の持つ制約を反映している。

ここに紹介した三社については、ほぼすべての例で55歳から60歳の従業員の給与が大幅に減額され、企業に人件費の大幅な節約がもたらされた。このような仕組みが社員に受け入れられているのは、おそらく報酬が社員の生産性だけでなく、ライフステージに応じて変わる経済的ニーズを反映すべきという根強い日本的な考え方に沿うものだからであろう。

(出典)
厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp
厚生労働省 平成17年版高齢社会白書、東京、2005年
労政時報 2005年7月号(特別号)
日本経済新聞4月3日
読売新聞2006年3月1日
読売新聞2006年4月1日

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