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体験を語り、社会にアピールを始めた認知症の人たち
・・・日本からの報告

1.2006年10月16日、17日 認知症の人「本人会議」

「きれいなコスモスを見て感動したりするんだよ」
「(本人同士が集まって話をすることで)こんなにもパワーがもらえるものなのか」
「かわいそうというのではなく、遠ざかるのでもなく普通に接してほしい」
「困っていたら助けてほしいけど、いつも困ってばかりではない」
「家族が困っている。助けてあげて」

本人会議2006年10月の晴れた日に、古都・京都において日本で初めての認知症の人の「本人会議」が開催され、全国から集まった7名の認知症の人は次々に気持ちを語り始めました。
それ以前にも、公開の会場に認知症の人が登場して自身の気持ちを訴えるという機会はすでに始まっていました。 たとえば、「The 20th International Conference of Alzheimer's Disease International Kyoto 2004」では、越智俊二氏が「病気になって本当に悔しい。もう一度元気になって働いて社会の役に立ちたい。そして妻を楽にさせたい」と訴えた姿は大きな感動を全国の人々に与えました。また、全国で行われている認知症の人と家族が集う会合では、認知症の人同士が話し合う機会もまれではありません。
しかし、今回の本人会議は「認知症の人も参加したイベント」でもなく、「介護者が付きっ切りでいる本人同士の語り合う場」でもありません。この会議はあくまでも認知症の本人自身によって社会へのアピールをまとめていく日本で最初の会議でした。

■「本人会議」概要
【主催】「本人ネットワーク」支援委員会

  • 委員長:松本一生(認知症の人と家族の会理事、松本クリニック院長、大阪人間科学大学教授)
  • 認知症の人と家族の会、若年認知症家族会・彩星の会、認知症介護研究・研修東京センター、「本人ネットワーク」を支援する関係者で構成

【開催日】2006年10月16日、17日
【場所】京都国際ホテル
【会議の位置づけ・ファンド】認知症への理解を進め、認知症の人とその家族を地域で支える国民運動である「認知症を知り 地域をつくるキャンペーン」の一環として実施。厚生労働省の研究補助金による。

認知症の人自身が出会い、連帯を強めていくためのネットワーク作りを支援する活動は、2005年から始まった「認知症を知り 地域をつくるキャンペーン」(Note 1)の一環として「本人ネットワーク支援委員会」によって進められ、認知症の人と家族の会の支部(複数)や日本各地の家族と本人の集いの状況を取材するとともにホームページなどで報告することからスタートしました。そして、2006年度の主要な活動として「本人会議」が開催されました。

10月16日の第1日目に、本人ネットワーク支援委員会の各団体から推薦された7名の参加者が京都に集合しました。
会議場では、家族や支援者は離れた場所から見守る形を取り、松本一生委員長の司会の下で本人だけの会議が始まり、自己紹介、率直な自身の気持ちの表明、社会に訴えたいことなどを語り合いました。そのなかではとくに「認知症いうことによって、人間としてだめだということを言われているような感じがある。決して人間としてはだめじゃなくて、ちょっとしたことがあれば、何かの手を助けていただいたら、それで十分に仕事はできるんです。それがわかっていただけないために、もうこの人は記憶障害とか認知障害とか言われるようなってしまう。そうして、外から閉鎖されてしまう偏見にあっている。その偏見をなくしていきたい」との声が強く出されました。

17日の会議第2日目には、前日話し合われた内容を整理して「本人会議アピール」に纏め上げていきました。支援委員会事務局では、会議1日目の討議におけるキーワードの一覧を用意したのみで、「本人会議アピール」の文言については「『何かをしてほしい』とのトーンが多すぎるアピールは好ましくない。私たちにできることもたくさんある」「同じ認知症の人を励ますことも重要」などの意見も出るなかで、アピール文が練り上げられていき、17項目にわたる「本人会議アピール」が完成しました。

■本人会議出席者
【性別】男性5名、女性2名
【年代】40歳台1名、50歳台2名、60歳台3名、70才台1名
【住所】日本国内各地域
【就労状況】就労中4名、休職1名、病気退職1名、無し1名
【診断名】アルツハイマー型6名、ピック病1名
【診断時期】5ヶ月前1名、1年前3名、2年前1名、5年前1名、6年前1名

クリスティーンさん夫婦との交流アピールの完成後に、「発言する認知症の人」の先駆者であるオーストラリアのクリスティーン・ブライデンさんご夫婦との交流会が行われました。
この交流会で、クリスティーンさんは次のように述べました。「日本において認知症への対策が非常に早く進んでいることに驚いている。とくに、地域で支えるという考え方が大きく打ち出されていることに大きな可能性を感じる。日本は世界を牽引する立場になるのかもしれない。オーストラリアで2005年に開かれた認知症の人と家族が参加した“National Consumer Summit on Dementia”におけるコミュニケから2006年の政府による“National Framework for Action on Dementia<2006年から2010年までの行動計画>”にいたる経験(Note 2)の中で、本人と家族によるポリシー・メーカーへの働きかけが重要であること、とくに認知症への適切な対応が進むことが医療、介護コストの削減さらには社会全体への経済効果があることを証明して説得することが重要であると感じている」

「本人会議」の日程の最後にテレビ、新聞、雑誌社22社の出席のもとで記者会見が行われ、松本支援委員会委員長による会議内容の紹介があり、参加者代表として中田新吾氏より「本人会議アピール」の朗読が行われました。
また、参加者である吉田多美子氏、加藤芙貴子氏も記者会見に参加しました。  しかし、本人会議参加者7名中の4名は地域社会や会社からの偏見を配慮して記者会見への参加を見送らざるを得ませんでした。認知症への偏見はまだまだ存在していることの現れであるといえます。

2.「本人会議」「アピール」とその意義-記者会見より

1)本人会議出席者:
本人会議記者会見加藤芙貴子:出会いというのは非常に大切なことなので、その大切な出会いを皆様方とともにできたことをものすごく感謝しております。(中略)とにかく生きているのは生きておりますので、まあそれなりにずうずうしく世を渡っていこうかなと思っております。

吉田多美子:同じ共通した悩みを持っておられる方たちとお会いできて、お顔を見るだけで、おはようございますとかのあいさつで、とても励ましを感じました。それぞれのところへ帰っていくんですけれども、この集まりの中のお一人、お一人のことを思いながら、私自身も励まされて、一生懸命生きていきたいなというふうな、そんなことを思いました。

中田新吾:いろいろな方たちの認知症の状況、意見の交換ができて、また、サポートをどうしていくかいうことを今後の課題として、話し合いが意義あるものとなったと思います。今後もこういった形で全国各地の認知症患者の方に少しでも力になって、光が差せるように国の方にも働きかけられるぐらいにまで私たちがなれたらいいなと思っています。

2)松本一生(「本人ネットワーク」支援委員会委員長):今日ここに集まって発言されている方は軽いから話せるのだという誤解があるかもしれませんが、そうではありません。診断されて6年以上が経過している方もいらっしゃいます。一方で、たとえ軽くとも言葉によって表現できない方々もたくさんいらっしゃることも事実ですが、このアピールが認知症の人の気持ちを語っていることは事実です。

3)永田久美子(認知症介護研究・研修東京センター主任研究主幹):本人の思いや力を周囲にわかってもらえない場面での無念さや孤独、思いや力に沿わない周囲の対応や専門家の治療・ケアを受ける過程で、むしろ傷つけられ、状態を必要以上に悪くした体験も、参加者からたくさん語られました。認知症の人が暮らしていくためには支援が必要です。しかし、本人の思いや力を知らないままの支援は、それがどんなに善意のものであっても、本人を逆に苦しめることになりかねず、結局は支援の成果もあがりません。まずは、本人の思いと力をしること。たとえ一見、どんなに認知症が進んでいるようでも、「だめだと決めつけないで」。人としての本人の思い、長年生きてきた本人の底力が必ずあることを忘れずに、それらを「知ろうとすること」を常に大切に。

4)高見国生(認知症の人と家族の会代表理事):意義は5つあると思います。
1つは、認知症の方当事者が自分たちの会議を開いたということです。従来から会議のお客さんとして参加して、司会者から質問を受けて答えるのではなく、本人自身が自分たちで会議をするということは初めてです。2つ目は、社会へのアピールをまとめたということです。これもはじめてのことです。3つ目は、何よりも7人の人の間に友情が芽生えて、お互いが力づけ合った、励まし合ったということが大きなことです。当事者同士がつながり、交流するということが何にも増して力になることを証明していると思います。4つ目は、家族が同行してきていますが、その家族が新たな配偶者あるいは父親、母親の姿を見て改めて本人を理解した。「感動した」という言葉が出ています。本人と家族は毎日一緒に暮らしていますが率直な気持ちというのは語られていないことが多いのです。5つ目の意義は、今日ここで7名の人が集まって会議をしたということは、この7名の人だけでなく、全国の認知症の人たちに限りない励ましを与えたということです。

5)クリスティーン・ブライデン(オーストラリア):本人会議アピールの内容に共感いたします。認知症とともに生きることは決して容易なことではありません。非常に大変なことです。でも最大限の努力をして、前向きに生きていってください。ご家族の方たちにはこう申し上げたいと思います。認知症とともに生きる方ができること、これを喜んで、たたえてあげてください。その人ができないことにフォーカスして絶望するのではなくて、その人の本当にある内面、これにフォーカスをしてケアしてあげていっていただきたいと思います。認知症になっても、わたしたちの意味が減ずるわけではない。ぜひ私たちの生きる価値と生きる尊厳、これを認めてください。

■本人同士で話し合う場をつくりたい

  1. 1.仲間と出会い、話したい。助け合って進みたい。
  2. 2.わたしたちもいろいろな体験を情報交換したい。
  3. 3.仲間の役に立ち、はげまし合いたい。

■認知症であることをわかってください

  1. 4.認知症のために何が起こっているか、どんな気持ちで暮らしているかをわかってほしい。
  2. 5.認知症を早く診断し、これからのことを一緒にささえてほしい。
  3. 6.いい薬の開発にお金をかけ、優先度の高い薬が早く必要です。

■わたしたちのこころを聴いてください。

  1. 7.わたしはわたしとして生きたい。
  2. 8.わたしなりの楽しみがある。
  3. 9.どんな支えが必要か、まずは、わたしたちにきいてほしい。
  4. 10.少しの支えがあれば、できることがたくさんあります。
  5. 11.できないことで、だめだと決めつけないで。

■自分たちの意向を施策に反映してほしい

  1. 12.あたり前に暮らせるサービスを。
  2. 13.自分たちの力を活かして働きつづけ、収入を得る機会がほしい。
  3. 14.家族を楽にしてほしい。

■家族への思い

  1. 15.わたしたちなりに、家族を支えたいことをわかってほしい。
  2. 16.家族に感謝していることを伝えたい。

■仲間たちへ

  1. 17.く深刻にならずに、割り切って。ユーモアを持ちましょう。

3.「本人会議」の影響と今後の展望

「本人会議」に引き続き、2007年2月には「若年認知症サミット」が広島市で認知症の人と家族の会の主催で開催されました。また、全国の認知症の人による「集い」の輪も大きく広がりつつあります。今回の「本人会議」が日本社会に与えたインパクトは非常に大きなものがあります。

1)マスコミの反響
記者会見にはテレビ、新聞、雑誌社22社の出席があり、大きな反響がありました。翌日以降に全国ネットワークテレビの認知症特集において本人参加者の声も含めて本人会議が詳しく紹介され、全国紙に多くの記事が掲載され、雑誌でも詳しい内容が紹介されました。国民の認知症への理解を進めた功績は非常に大きなものがありました。

2)今後の施策への影響
2005年の介護保険制度(Note 3)の改革にあたって、介護保険法の第1条目的規定のなかで要介護状態の人の「尊厳の維持」が新たに加えられました。そして高齢者が住みなれた地域で尊厳のある生活を継続できるよう、要介護状態になっても高齢者のニーズや状態の変化に応じて必要なサービスが提供される体制を目指しています。そして、地域の介護拠点としてワンストップ型サービスを提供する「地域包括支援センター」の設置や、地域医療への支援、介護の質の向上、モデル地域の設定とその成果の普及などが進められています。「尊厳のある生活」を保障するためには、認知症になっても安心して暮らせる地域をつくる努力の中で、本人の気持ちを聞くことが実践され、それの内容に沿って施策や医療・介護が進められることが必要です。具体的には、以下のことなどが考えられます。

アピール(1) 仲間と出会い、話したい。助け合って進みたい。

  1. 施策の中で本人同士が話し合う場を保障する

アピール(5) 認知症を早く診断し、これからのことを一緒にささえてほしい。

  1. 施策の中で早期診断、医療と福祉の連携を確立

アピール(10) 少しの支えがあれば、できることがたくさんあります。

  1. 「してあげる」介護ではなく、本当に求められている介護はなにかを明らかにして実践する

アピール(13) 自分たちの力を活かして働きつづけ、収入を得る機会がほしい。

  1. 認知症の人の(も参加する)仕事の確保、社会参加の保障

アピール(14) 家族を楽にしてほしい。

  1. 家族介護者のレスパイト・ケアの充実

4.地域で認知症の人と家族を支えるために

正しい知識や情報、周囲の理解がないために適切な治療や支援が受けられず、不安と孤独の中で状態を悪化させ、尊厳ある暮らしとはかけ離れた日々を送っている認知症の人は全国で膨大な数に上っています。政府、地方自治体そして医療・福祉関係者の努力とともに、非政府組織そして一人ひとりの市民の自覚と行動も求められます。
「認知症を知り 地域をつくるキャンペーン」では、認知症についての学習会に参加し地域で認知症の人や家族を支援する「認知症サポーター」がすでに全国で約12万人(2007年1月現在)誕生しています。そして、街角で、職場で、交通機関で、スーパーマーケットで、そして認知症の人が生活するあらゆる場所で認知症を理解し、「認知症のために何が起こっているか、どんな気持ちで暮らしているか」を理解し、「少しの支え」の手が差し伸べられる社会作りをめざしています。

(Note)

  1. National Roll-out of the Campaign to Understand Dementia and Build Community Networks
    http://longevity.ilcjapan.org/f_issues/0603.html
  2. National Consumer Summit on Dementia
    http://www.health.gov.au/internet/wcms/publishing.nsf/Content/
    ageing-dementia-nfad.htm

    National Framework for Action on Dementia
    http://www.alzheimers.org.au/content.cfm?infopageid=2238
  3. Revision of the Long-term Care Insurance System in Japan
    http://longevity.ilcjapan.org/t_stories/0603.html

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